「こども家庭センター」とは?—児童福祉法改正で広がる地域子育て支援の新たな拠点

支援制度・法律

2024年4月、子育て家庭にとって大きな一歩となる制度が本格始動しました。それが、児童福祉法等の改正により設置が努力義務化された「こども家庭センター」です。市区町村を拠点に、妊娠期から子育て期までを切れ目なく支援する体制が整備され、地域における子育て支援の要として期待が高まっています。

このコラムでは、法改正の背景、センターの機能、具体的な支援内容、今後の課題まで、わかりやすくご紹介します。

なぜ改正されたのか?背景と目的

近年、児童虐待や育児の孤立など、家庭を取り巻く課題は複雑化しています。
こうした背景を受けて、2022年に「児童福祉法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第66号)が成立。
2024年4月からは、その中心的な制度の一つである「こども家庭センター」の設置がスタートしました。
市区町村が主体となり、これまで分かれていた母子保健(保健センターなど)と児童福祉(子ども家庭総合支援拠点)の機能を統合し、子どもと家庭を一体的に支援する体制をつくることが目的です。

こども家庭センターとは?

こども家庭センターは、以下のような役割を担う、地域に根ざした相談・支援拠点です。

  •  妊娠期から学齢期までの子ども・家庭への継続支援
  •  サポートプランの作成・調整・実施
  • 専門職(保健師・社会福祉士等)による支援
  • 他機関との連携による包括支援

具体的には、妊娠届や乳幼児健診などを契機に家庭の状況を把握し、必要に応じて支援計画(サポートプラン)を策定。必要な支援機関と連携しながら、訪問・面談などを通じた支援を行います。

支援の流れと連携体制

【相談受付】  保健師や子育て相談員などが相談に応じ、課題を整理します。
【ニーズ把握とプラン作成】  面談やアセスメントを通して、どのような支援が必要かを家庭と一緒に考えます。
【支援の実施】  訪問支援、地域資源の活用、他機関との連携などにより支援が実行されます。
【定期的な見直し】  状況に応じて支援内容の見直しを行い、柔軟に対応していきます。

全国の設置状況(2025年時点)

最新調査(2025年5月)では、全国1,741の市区町村のうち、876自治体(約50.3%)がこども家庭センターを設置しています。
都市部では高い設置率を示しているものの、町村部では未設置の自治体も多く、人的リソースや組織体制が課題となっています。
特に、統括支援員の確保や体制構築の難しさが指摘されており、今後は国・都道府県の支援による整備が求められます。

ガイドラインの整備と今後の課題

厚生労働省は2024年3月、「こども家庭センターガイドライン」を発表。運営体制や支援の手順が明確に示されました。

  •  センター長・統括支援員の配置義務
  • サポートプランの作成ルール
  • 他機関とのケース会議の実施
  • 専門職の継続研修の推奨

今後の課題としては、・人材の確保と育成 ・センター設置の地域格差解消 ・NPOや地域住民との連携 などが挙げられます。

民間団体との連携の可能性—「ホームスタート」等との協働へ

行政の支援に加えて、地域にはNPOなど民間主体の訪問支援活動もあります。例えば、「ホームスタート」は子育て経験者が家庭を訪問し、傾聴と共感を通じて親子を応援する活動として知られています。

こども家庭センターとこうした民間支援との連携により、より柔軟で身近な支援が可能になります。

 

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